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MESA/Boogie SANTANA Guitar Player誌 1981年

Greco EGF-1200

Sunburst Lady 1981年

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The Ventures Model

ランチパックでギターアンプを作ろう!

材料費:ほぼ1,000円!(交通費、工具、配線材、ノブ類を除く)

仕事でギターや機材に触れ続けていると、どうしても “遊び心” からは遠ざかってしまいがちなことは否めません。尤も修理や特注もの自体が真剣勝負なのですから、当然といえば当然。そういう背景で自由工作であれば好き放題できるわけですが、今度は時間に余裕がないと、なかなか考えたり工作したりできなくて、もどかしく思うのが実状です。

そんな中、たまたま100均で見つけたランチパックが形状的に使えそうだと閃いたので、仕事や自宅での軽い練習に使えるミニアンプを製作してみました。

回路は LM386というポピュラーなパワーアンプICを使った極めて平凡な仕様ですが、私の欲する機能性を採りいれたため、結果的に高い満足度が得られた(自己満足度:高)作品となりました。ハンドメイドの原点はこうしたところにあるんじゃないかと、思いっきり手前味噌なイントロで失礼しました。

それでは早速製作を進めてみましょう!

 

<私の欲しかった(使いたかった)ミニアンプとは…>

・スピーカーやノブ類が上面にあり、横形・横置きであること。

・INPUTジャックは筐体の右側面にあること。

・低ノイズ、低消費電流であること。電池交換が楽であること。

※先ず機能優先で。音の方は試作後に考えるということにします。

 

<材料>

・ランチパック(弁当箱)

・スピーカー:フルレンジ 直径8cm 定格入力7W インピーダンス8Ω

 ※規格はランチパックのサイズに合わせて適宜選んでください。

・IC:NJM386BD または LM386G

・ICソケット:8ピン用

・抵抗器:10Ω 1/4W

・コンデンサ:セラミック 0.047(473)×1、0.1(104)×1

       フィルム 1(105)×1、0.1(104)×1、0.047(473)×1

       電解 220×1、100×1、10×1

 ※単位は全てμf。耐圧は電解が10V以上。他は50V以上。

・ジャック:6.3φ標準プラグ用 ステレオ仕様×1

・ポット(ボリューム):1kΩB×1、10kΩA×1、100kΩA×1

 ※A・Bはカーブ特性、直径は16mmを推奨

・電池スナップ:006P(9V)用×1

・基板:ユニバーサル(蛇の目)基板×1

 ※カットしやすい紙エポキシ製がお勧め。硬質なガラスエポキシ製や

  はんだ付けの難しいスルーホール処理基板はお勧めしません。

・その他:配線材数色、ビス&ナット、はんだ、工具

・ヒント:電子部品の多くは、秋月電子製の「ユニバーサル基板で作る

     386アンプキット」に含まれますので、各パーツに拘らない

     方はこれをベースに含まれない部品をバラで揃える集め方を

     されると楽だと思います。

 

<回路図>

※図中 IC の3番の位置は中央ではなく、もう1段上が正しい位置です。

書き上げてから気付きました。お詫びのうえ訂正させていただきます。

 

<パターン図と実際の配線状態>

店主の方法を紹介します。部品点数が少ない場合はパターン図のソフトを使うよりも手っ取り早いので、この簡易法を多用します。

面倒くさいですが、脳みその老化防止に効果があって欲しいな(笑)。

先ず5mmの方眼紙を用意します。運が良ければ100均でも入手できます。ノート形よりもレポート用紙形の方が使いやすいです。

ユニバーサル基板のピッチは約2.54mmなので、5mm方眼は約2倍と

見当することができます。部品の大きさ(特にコンデンサの直径)に注意しながら、シャープペンで各部品とパターンを描いて行きます。

慣れないうちは、必ず基板とパーツの現物とサイズを見比べましょう。

※上図では紹介のためペン入れと文字入力を行っていますが、通常は全

 てシャープペンによる手書きです。

 

0.はじめに(ご注意)

ドリルやはんだごてを始めとする工具を使用しますので、取り扱いには十分注意し、怪我や健康への影響が出ないよう気をつけてください。

本DIY工作について起きた事故や怪我には、Studio楽庵は責任を負いません。自己責任で楽しめる方のみ製作されるよう、お願いいたします。

 

1.ふたの加工①(スピーカーを取り付けるための穴開け)

ランチパックのふたの裏側に用意したスピーカーを当て、縁の中に納まるかを確認します。ランチパックの縁を加工してしまうと密閉性に悪影響が出るだけではなく、最悪ふたが閉じられなくなってしまいます。

スピーカーが少し大きい場合はフレームを加工する手段もありますが、フレームは鉄製であることが多く加工は容易ではありません。ここはランチパックに無加工で装着できるスピーカーを選ぶか、またはその逆にスピーカーが無加工で装着できるランチパックを探しましょう。

もうひとつ忘れてはならないのが、スピーカーの高さ(深さ)です。

ふたに寸法が合っても、高さがあり過ぎだとふたは閉まりません。

加工前に必ず現物をあてがって、慎重に確認することが大切です。

作例の場合、ふたのほぼ中央部にゲート(金型に樹脂を注入した痕跡)

がありましたので、そこを中心にスピーカーの型紙を製作します。

先ずスピーカー開口部の直径を何mmにするかを決めます。

ノギスや定規で外縁の内径を測ります。ぴったりだと縁が見えてしまって体裁が悪いので、僅か(1~2mmくらい)に小径にしておくと良いでしょう。

作例では外縁の内径が70mmでしたので、開口部の直径を68mmにすることにします。

余談になりますが、写真に写りやすいようプラ製ノギスを百均で求めてきたのですが、このレベルの工作では精度的には十分。むしろ軽くて使い勝手も悪くないため、以降のアバウトな測定はこれを使っています。

 


寸法が決まったら、テンプレートを製作します。ランチパックのような形状の容器への作図は難しいので、テンプレートを作って転写します。

左:コンパスカッターを使って白ボール紙を直径68mmに切抜く。

右:切抜いた部分をはめて、中心点を通って直角に交わる線を引く。

※手順はこの逆(線を引いてから円形に抜く)でも問題ありません。

どうしても “テンプレートを作りたくない” という場合は、ふた一面にマスキングテープを貼って、それに作図するという方法もあります。

 


右:スピーカーをマウントするネジ穴の位置を、対角線で測る。

左:その寸法を元にスピーカーを置いて、ネジ穴と外周栓を書き写す。

 


左:テンプレートの作図が終ったところ。

右:テンプレートを切り出したところ。外周は鋏を使いました。

 


左:ふた中央のゲート跡に合せてテンプレートを仮止めする。

右:中央部を外し、針のようなもので円周とスピーカーネジ穴を刻む。

 


左:ネジ穴が見にくいですがこんな感じ。円周はペン入れをしました。

右:ネジ穴をピンバイスで穴あけ。ドリル刃は1.5Φを使用。

 


左:ネジ穴はスピーカーをあてがいながら正確に4Φまで拡大する。

右:円周の抜き方はいろいろあって、3Φくらいの小穴を円周に沿って

  開け、ニッパーで繋いで行く方法や8Φくらいの大穴を開けて糸鋸

  で繋いで行く方法がある。作例では半周ずつ前述の方法で加工。

 


左:工具の紹介。糸鋸とハンドドリルで、40年以上愛用の年季もの。

右:穴は抜けたが切り口が汚いので、ナイフ等で大まかに整える。

 


左:仕上げは空き缶等に粗目のサンドペーパーを巻きつけて整える。

右:磨き終り間近。留意点は、円周をいびつにしないよう丁寧に。

 

2.ふたの加工②(ポットを取り付けるための穴開け)

ふたの裏側に用意したスピーカーを仮置きし、ポット(ボリューム)を

配置してみてクリアランスが適当であるかを確認してから、油性ペンでしるしを付けておきます。作例は3コントロール(ゲイン・トーン・ボリューム)としましたので、体裁よくクリアランスも大切に考えます。

※しるしは目安の位置なので、後で測って正確な線引きをしておく。

同様に容器側にもインプットジャックを設定します。当初の目論見どおり、右・真横からのプラグインができるようにしました。


左:スピーカーを仮置きし、ポットを配置して位置を確認する。

右:位置を決めたら穴開け。容器側にはインプットジャックを取付。

 

3.電子部品とアンプ基板の製作 → パターン図参照

アンプの心臓部である基板を製作します。といっても“386”を使用したアンプの基板は部品点数も少なく回路もシンプルで、電子工作としては簡単な部類に入ります。だからといっていい加減な工作では良い音は期待できませんし、最悪の事態では動作しません。ここはひたすら丁寧・正確を心掛けて一発出音を目指しましょう。


左:基板に装着する電子部品の全て。小さい基板には意図があります。

右:電子部品装着後の基板・表裏。3本線はGAINポットに直接マウン

  トするためのもので、抵抗器のカットした余り線を使っています。

 

4.インプットジャックにコンデンサとシールド線を取り付け

1μFのカップリングコンデンサは、ジャック側に付けることにしました。写真上側の3列の端子は、プラグを挿入すると持ち上がってオープン(非接触)になることを利用し、中継点として活用しています。ジャックの形状が異なる場合は各端子の役割をよく確認しないと、基板に行く前に信号がカットされてしまいます。

 

5.ふたにポットや基板をアセンブリ

すみません。作業に“気”が入り過ぎたのか、撮影を失念したまま進めてしまいました。

ゲイン以外のポットを固定し、先に基板を通らない配線を行います。スピーカーの左上にあるのはラグ端子で、スピーカーをマウントするビスを活用して取り付けてあります。つまりここがグラウンドポイント(共通アース)になるわけで、各セクションのグラウンドは他を経由させず、ストレートにここへ落とすことでアースループ(発振やノイズの元)を防ぎます。

空いた端子で電源とトーンのコンデンサをグラウンドに落とします。

回路図と実際の配線とで、ここが最も印象と配置がかい離する部分だと思いますが、グラウンドの役割を考えながら配線を進めて行きます。

 

ゲインのポットには、写真右のように基板を取り付けます。

ふたに取り付け前に必要な配線を忘れずに行っておきます。

基板は浮かせてあるのでショートの心配はほぼありませんが、念のためテープ(作例では養生テープ)を貼って絶縁します。

※各ポットに定格を貼ったのは撮影用のためでしたが、実際には忘れっ

 ぽくなった私がしばしばこれに救われることがありました(苦笑)。

 

6.スピーカーに何故か長めの配線

完成後の使用感によってカスタマイズしたくなった時に備えて

スピーカーのワイヤーは長め(

ほぼ一周分)にとっておきました。そのままだと必ずどこかに引っ掛るので、スピーカーのマグネットを巻くように配線しておきます。

 

7.電池の収納と固定方法

私が工作を始めた少年時代には9Vの006P乾電池用の電池ケースなど秋葉原にも数種類しか流通していませんでしたが、今日では何十種類にまで増えて選びきれないくらいになりました。

筐体がアルミケースのエフェクター等にはたいへん重宝しますが、今回のラッチパックのような曲面の多い容器が筐体の場合は、少々勝手が違う場合があります。なので今回は電池ケースを使用しません。

そこで昔取った杵柄ではありませんが、スポンジ(ウレタン)によって電池押えと吸音材(防振材)との両立を図ってみようと思います。

8mm~10mm厚くらいのウレタンシートを容器内側の底面に収まるようにカットし、左端で電池を押え、中央でスピーカーから押えらえるようにします。これだけで電池は確実に固定され、防振効果もあります。

 

8.完成@歓喜のサウンドチェックへ

さて一旦できあがりです。ちょっとテンションが弱めですが、様子見というか、どんなバグが出てもショックを受けない心構えですね(笑)。

ギターにシールドを挿し、アンプにもプラグインします。

思惑どおり筐体の右側面にジャックがあると、もの凄く使い易いです。

プラグインすると「ブッ」と音がして電源が入ります。

先ずボリュームを上げると音量が程々に大きくなります。よしよし…

次にトーンを右(時計廻り)に回すと高音域が出てきます。ふむふむ…

最後にゲインを上げると更に音量が上がって歪み始めます。やかまし!

というわけで、めでたく完成(自作成功)しました。パチパチ。

まぁあたりまえというか、何というか…

課題はここからで、冒頭に書いた当初の目的は達成できました。更に日常の友とするためには、何が必要かを使いながら考えてみました。

1.電源が入った時のパイロットランプ(LED)あった方が良いか?

2.トーンコントロールの効きが少々穏やか。更に効くようにするか?

3.スピーカーのコーン紙に触ってしまう。ガードあった方が良いか?

4.歪みからクリーンまで、音量に関係なく使えるようにならないか?

というわけで、1~2日の間でこのくらいの検討課題が出てきました。

この時点での達成感とすれば、ノイズが少ないことが挙げられます。

特にシールドは設けなかったのですが、回路をコンパクトにしたこと。

電池電源にしたこと。1点アースの効果があったのかもしれません。

 

増1.スピーカーガード(グリルネット)の製作

使用する度に筐体の中央部を掴むことが多く、自然とスピーカーのコーン紙にも触れてしまいます。その都度「おっとイケネェ!」と思うこと度々。そのうち傷つけるので、先ずこれを解決することにしましょう。


左:材料の鉢底ネット 、テンプレート、万能はさみ を揃えたところ。

右:鉢底ネットにテンプレートを重ね、ずれないように周囲をカット。

 

ネットに何の素材を使うかは、最初から決めていました。というより、Vintage Pignose 7-100 の劣化したグリルネット(パンチングされた樹脂シート)の経年劣化補修に、以前から使用実績があったからです。

写真の解説どおり、鉢底ネットに冒頭で作ったボール紙のテンプレートを重ね、ずれないように万能はさみでサクサクとカットして行きます。

ずれないように押えておくのが苦手な方は、油性ペンで縁を記入すると良いでしょう。ネットの色が濃いので一瞬分からなそうですが、油性ペンで記入した線は光沢があるので、スタンドでも太陽光でも光を反射させると線を判別することができますよ。

※普通の文具用はさみは使わないでください。切れなくなってしまいま

 す。万能はさみが無い方は、ニッパーの使用をお勧めします。

カットができましたらネットのマス目にビスが通ることを確認し、格子が当たってしまう場合はその箇所をニッパーでカットして調整します。

ふたとスピーカーで挟んでしまうので、特に問題は生じません。

というわけで、追加工作第一弾は割とクールに完成しました。

効果の程は一目瞭然!コーン紙に触れることも無くなり、見た目もアップ、満足度もアップです。

後は使っているうちに格子の中へホコリを溜めてしまわないよう、マメなお掃除が欠かせませんね。

 

増2.マスターボリュームの追加

使っている時間帯にもよるのですが、こんな小さなアンプでもフルテンの音量が厳しいことがあります。そこでマスターボリュームを増設してみることにしました。いきなり筐体には穴あけをせず、方式とポットの定格を検討し、マスターボリュームとして機能するかを確かめます。


左:回路図。ポットとスピーカーの関係をこんな感じにしてみます。

右:トーンポットを外して穴を借り、仮配線を行って試奏します。

  ジャンクワイヤーを使ったので太さも配色も出鱈目ですみません。

ポットは最初 500ΩA で試しましたが、小音~爆音 の変化が後半に急に上り過ぎて却下。500ΩB に換えると幾分マシになりましたが、もう少しスムースさが欲しいところ。100ΩB に換えるとかなり使える変化になったので、当分はこれで試してみることにしました。

配線方式とポットの定格が定まったので、ふたに新たに穴あけし、トーンのポットを元どおりにしてから、マスターボリュームを取り付けて、きちんと配線をし直します。第一段階の完成でスピーカーのケーブルを長くとっておいたので、追加加工を楽に行うことができました。

 

というわけで、追加工作第二弾も淡々と工作して完成しました。

ノブの配置を含めてシンメトリになったので、バランスの良い外観に変りました。そこでノブも小形メタルノブに交換すると、ランチパックのほのぼの感が薄らいで、メカメカしく変ってきました。

これからは、更に似合いのノブが見つかるか探してみたいと思います。

 

増3.仕上げ方いろいろ… やること未だあるのかな?

えっ、終わりじゃないの?と思われるかもしれませんが、この先は皆さんでいろいろと仕上げに工夫をしてみてください。という提案です。

最初の所感で出た、パイロットランプ(LED)とトーンコントロールの効きについては未だ未着手です。当初はマスターボリュームが付いた位置にパイロットランプを付けることも考えたのですが、こうしてバランス良くノブが配置されてしまうと、割り込んでまで付けるかな?という気持ちにもなってきます。トーンコントロールについてはもう少し効きが強くてもいいかな?と思う反面、所詮パッシブのハイカットに過ぎないので、この程度でも良いのかな?とも考えるようになりました。

使い勝手の面で挙げてみますと、

5.電源にACアダプタ端子を増設した方が良いか?

6.歪メインで使う方はゲインの効きを広くとるため 1kΩC に交換。

7.クリーン範囲を若干広くとるためゲインポットを 2kΩB に交換。

8.トーンコントロールのコンデンサを 0.1μfに交換してみる。

9・ワイドレンジ傾向には入力のコンデンサを 10μfに交換してみる。

というわけで、1~2日の間でこのくらいの検討課題が出てきました。

例えば店主の場合、ACアダプタは(このアンプには)いらないかな?と思ったので、技術的にはできますがあえて非装備にしています。

やる・やらないは別として、いろいろ考えてみましょう。そして思いついたら、必ずその実現方法について考えるようにすると、楽しみ方が一層深まると思います。ミニアンプのお題がお役に立つことを願って!

                         12 May 2020