工房風の箱形ギタースタンドを作ろう!
材料費:ほぼ0円!(接着剤、底板、キャスターを除く)
一般に見られるギタースタンドと違って見てくれは垢抜けないですが、生産現場で使われる安全性と機能性を重視した、実用本位の形態です。
ギター工房やリペアショップで見かける、箱形のギタースタンドを自作してみましょう。(もちろんベースもOK)
ギターの外観を演出するスタンドというよりは、確実な安全・保護を優先した作りとなっています。
写真のとおり安定度は抜群で、隣接するギターどうしの接触も起きません。ちょっとしたアクシデントで“ギターを倒す”リスクもグッと少なくなります。
何よりも玄人テイストがいいですね。
製作の発端は、数年前に体をこわして三箇月ほど寝たきりに近い状況に陥ったことがありまして、当然バンド活動もストップ。何かできることはないかと考えた中、ギター工場内の写真に写っていた箱形のギタースタンドを、ダンボールで作れないか?という発想にたどり着きました。
実物はコンパネ(合板)で組まれた頑丈な造りですが、アマチュアの自宅用であれば、ダンボール製でも十分実用になると確信しました。
当然ホームセンターへ材料の買い出しになど行けませんが、幸いにも自宅に廃棄直前のダンボール(トイレットペーパーの空き箱)が数個ありましたので、これを活用することにしました。スーパー等での買物の際に分けてもらえる、空きダンボール箱を使うこともできますね。
それでは早速製作に入りましょう!
0.はじめに(ご注意)
ナイフを始めとする工具や接着剤を使用しますので、取り扱いには十分注意し、怪我や健康への影響が出ないよう気をつけてください。
本DIY工作について起きた事故や怪我には、Studio楽庵は責任を負いません。自己責任で楽しめる方のみ製作されるよう、お願いいたします。
1.仕様決定(寸法を決めましょう)
収納するギターを、代表的な形状とされるストラトキャスター形とレスポール形に指定し、両者に対応する汎用性を持たせることにします。
そして、ボディサイズを手持ちのギターからメジャーで採寸しました。
一区画あたりのスペースを、幅390mm、深さ450mm、厚さ80mmに
設定し、それを6区画設けることにしました。
ダンボールの厚さはコンパネほど正確ではありませんので、この6区画を寸法どおり作り、側板等は現物合わせで、後で決めることにします。
皆さんは店主の寸法を参考に、必要とされるサイズで作りましょう。
手書きのラフな作図で良いので、構造を確認することが大切です。
2.構造決定(作りを決めましょう)
ダンボールを 縦目+横目+縦目 の3ピースに貼り合わせて、強度をかせぐことにしました。そのメリットは、
①ダンボールの反りを相殺し、矯正することができる。
→ ダンボールの反りは予想以上に激しいことがわかります。
②ダンボールを厚くすることで、接着面がかせげる。
③板を3ピースにすることで、寸法足らずのダンボールを混入させて
も強度が落ちず、材の節約にもなる。
原理的には、ギターのボディ材をプライする理由と同じですね(笑)。
3.区画仕切と内底板の切り出し
さてここからは、実際の製作に入ります。部品を作ってしまってからの仕様変更は、振り出しに戻ってからの作業となりますので気をつけて。
ダンボール箱を解体して板状にし、区画仕切り(5枚分)と内底板(6枚分)を切り出します。→ 写真左
カット作業は必ずカッティングマットを敷き、金属製の定規で曲がらないよう正確な切断を心がけましょう。→ 写真右
※寸法が揃わなかった材は、妥協せず使用しないようにしましょう。
ダンボールには、梱包テープやホットメルト等の接着剤が使用されている場合があり、接着の障害や板の厚みが狂う原因になるので、それらは全て剥がしてください。
特に中間に挟み込む材は、多少体裁が悪くても大丈夫です。
※箱を開いた際の折れ目も、寸法が狂う原因になるので避けましょう。
4.接着剤の準備
接着剤には木工用ボンドを使いますが、そのままでは粘度が高すぎて作業がしにくいので、スポイトで適量の水を加えて水溶液を作ります。
あまりサラサラにしてしまうと返って使いにくいので、最初からたくさんの水(ぬるま湯)を加えることは禁物です。
写真のようにバターナイフで塗り拡げられる粘度を維持してください。
※木工用ボンドのブランドは不問です。写真の量ではとても足りません
ので、百均等で買い足せるものが良いでしょう。
5.切り出した材の貼り合わせ
部品(切り出した仕切り)と接着剤が揃ったら、バターナイフやヘラを使って、ボンドの水溶液を薄く塗って貼り合わせ、重石を乗せて圧着させます。
重石は量を使うので、水を満タンにしたペットボトルが最適です。
※2リットルボトルの場合、1本で2kgの重石になります。
6.側板の採寸と製作
区画仕切りと内底板ができ上がったら個々の材の厚みをノギス※)で測り、その寸法を元に、側板・前後左右の寸法を定めます。
そして側板の寸法には、この後9の工程で出てくる“キャスター付の外底板”をはめ込むためのスペース(10mm)も、設けておきます。
店主の場合ここで構想を変更し、側板は 横目+縦目 の2ピースに貼り合わせることにしました。計画どおりの3ピースにすると、接着断面が各コーナーに現れてしまうためです。箱状に組み上がった段階で、縦目のダンボールを仕上げに外周に巻くことで、側板どうしの接着面が隠れコーナーにRが付く(角が丸まる)効果を狙います。
※格段の精度は求めないため、ここは百均で入手できるノギスでよい。
7.組立開始
でき上がった側板に、区画仕切りと内底板を貼りつけて行きます。
ここは木工用ボンドを希釈しないで、イモ付け接着※)とします。
仕切りの間隔を正常に保つため、ダンボールの端材を活用して作ったスペーサーを挟んで(接着剤がつかないように注意!)圧着します。
※断面に多めの接着剤を盛るような感じで、ぼってりと接着すること。
製作してみると、2ピースの側板は3ピースの仕切りよりもずっと反りが激しかったので、本当に使い物になるのか今さらになって心配が出ました。しかし、スペーサーと重石を駆使して矯正に務めた結果、実用上支障ない程度には、板の反りの暴れを抑えることができました。
8.スタンド本体の仕上げ
箱ができ上がったら、全体の反りや歪を確認します。
製作例の場合、若干のよじれは残りましたが実用上の問題はないと判断し、外装の巻き付け作業に移行しました。
不覚にも最初に用意した材(ダンボール)が底を尽き始めたため、不本意ながらも残材からの切り継ぎで凌ぐことにしました。これは新たに材を用意すると、質感や厚みの差が生じてしまうためです。
この写真では、まだスペーサーがはさまったままですが、側板と仕切りがしっかり接着したのを確認してから、順に外していってください。
9.外底板の製作
スタンド本体ができ上がったらそれを裏返し、外底板をはめ込むためのスペースを採寸します。ピッタリで採寸すると入らない場合があるので、1~2mm小さめにすることが大切です。
採寸できたらホームセンター等でコンパネを購入し、その場でカットしてもらいましょう。またキャスターには色々な種類があるので、お好みで選びましょう。ただしギターをフルにスタンドに立てると相当な荷重になる(製作例の場合6本で約24kg)ので、キャスターの耐荷重性を確認しないと、使い物にならないばかりかすぐに壊れてしまいます。
店主の場合、まだ外出できる体調になかったので、やむを得ず家人に頼んで買ってきてもらったわけですが、まぁその指示の難しかったこと…
10.ついに完成!
でき上がった外底板をスタンド本体に取り付けて、いよいよ完成です。
ずれや外れを防止するため、外底板の固定にはエフェクターボードに使うマジックテープを小さくカットしたものを、四隅に使用しました。
裏面の外底板がはめ込まれた状態も、参考にしてくださいね。
11.仕上げ方いろいろ…
えっ、終わりじゃないの? と思われるかもしれませんが、この先は皆さんでいろいろと仕上げに工夫をしてみてください。という提案です。
①ケースの底に緩衝材を敷く。これはストラップピン等で、簡単に内底
板に穴が開いてしまうことへの防止策です。製作例の場合、毛足の短
いパンチカーペットの端切れを購入し、カットして敷いてあります。
②同様にギターのボディーを保護するため、仕切りの内面にもパンチカ
ーペットを貼ると良いでしょう。
③ダンボールの外板が気に入らない方は、ラッカーで着色したりカッテ
ィングシートを貼ったりして、個性的な仕上げを楽しんでください。