修理もろもろ雑記帳・こんなこともやっています…
楽器の修理を請け負っていると、たまに変った内容の依頼もちらほら…
納期の都合もあって毎度写真を撮っているわけにもいかないのですが、できる範囲でご紹介いたします。とにかく確実で丁寧に!
その1 友人の Fender製 ギタースタンド
「これ直して!」と、友人にどさっと置いて行かれたギタースタンド。
右の写真でお分かりのとおり、左右の基台を結ぶキャップがちぎれてしまっています。「専用部品も入手不可能だし、直らないよ。スタンドなんて安くて良い製品も沢山あるから、この際新しいのを買ったら?」というと、「だってこれ Fender製だぜ!諦められないよ…」と、友人。
確かに “Fender” のロゴあり。
えっなに Made in U.K.? 変ってますねぇ。てっきりアジア製だとばかり思っていましたョ。
若い方々には分かってもらえないかもしれませんが、店主の世代の2大ブランド Fender や Gibson というのは羨望の存在であって、とても身近に感じることはできませんでした。代理店の意向もあったのでしょうが、まだまだドルが高い時代だったので、商品の元の価値に対して遥かに高いプライスが付いていました。友人も “Fender” には条件反射で直立不動となってしまうのでしょうね。その気持ち分かります。
というわけで、直すことに決定。キャップの部分を加工して、ここに蝶番を取り付けることにしました。さっそく隣町のホームセンターに行って部品を探しましたが、なかなか具合の良いものに巡り合いません。
なぜなら建具用の蝶番は一様に金属製でネジ穴が可動部に寄っており、キャップにビス止めするには不都合な製品ばかりだったからです。
ようやく見つけたのが、アクリルケース等に使用する樹脂製の蝶番。
これならば、あらかじめ製品に開いている穴が合わなくても、加工して使用することができそうです。値段も約120円と、とても安価でした。
前後左右が分かるように、マスキングテープを貼って書き込みます。
裏返すと、ビス止めにちょうど良い場所に○印がありました。これは、部品を成型する時に付いた金型のピンの跡で、この位置を利用します。
作図と加工の経過を省略して、穴開けが終了した状態の写真です。
双方とも樹脂製なので加工はとても楽ですが、作図の段階で手を抜くと、修正が面倒になります。
たった8個の穴開けなので、とにかく丁寧な作業を心がけます。
開けた穴に 3mmのビスを入れて組み上げたところです。ズレや歪みもなく、一発で決まったことに感謝。本当はナット側にワッシャを入れたかったのですが、クリアランスがタイト過ぎるために諦めました。
出来上がったキャップを基台に取り付けて修理完了です!
元の形状が、スタンドにしては少々メカメカしいので、怪我の功名なのか、修理した箇所が溶け込んでしまっていますね。
それにしても、直ってから見直しても変ったデザインのギタースタンドだなぁと思います。
ロゴのところに記載してあったパテントナンバーは、いったいどの部位の機能に対して取得されたものだったのでしょうか?
パテントで保護する程の特徴とは何か? 新たな興味が湧いてきます。
結果的に、楽器の修理というよりは日曜大工的な工作みたいでした。
その2 割れた GCB-95 の旧形電池ホルダー
ワウのスタンダードといえば、Jim Dunlop の GCB-95 Cry Baby の名前がすぐに挙がりますが、マイナーチェンジで裏蓋に電池ホルダーが装備された時には、これで随分と使い易くなったと喜んだものでした。
しかしながら、最初のバージョンはとにかく脆い。
何回か電池の出し入れを繰り返すと、ピシっと亀裂が走って弾力を失い使い物にならなくなってしまいます。代替パーツをオーダーすることもできるのでしょうが、オーナーの方はステージが迫っていたので、応急修理して乗り切ることにしました。
「プラリペア」という商品名の “樹脂補修剤” が市販されているので、これを使うことにしました。接着剤ではなく、破損個所に新たに樹脂を形成して補修するという効能があり、強度的にも元の材質に匹敵するという特徴を持っています。
大切なポイントは、この電池ホルダーの材質が「プラリペア」の溶剤に反応(融合)するかということで、目立たないところに一滴たらして、樹脂が溶ければ OK。溶けなければ NGで、諦めなければなりません。
これを左の写真のように割れた箇所に盛り、1時間後に硬化を確認してから、右の写真のようにヤスリで形成して修理完了! あっけない…
写真のとおり無事に元どおりになりましたが、冒頭でも述べたように、この電池ホルダーには構造上の弱点があるため、またいつか同様の折損が起きてもおかしくありません。メーカーでもそれは把握しているらしく、現行の GCB-95 には改良版の電池ホルダーが装備されています。
右の写真のようなリプレイスメントパーツとしても入手可能ですので、紹介のケースのように破損する前に交換しておくことをお勧めします。
裏蓋の穴は同サイズですので、そのまま交換することが可能です。