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Original Pignose 7-100
Guitar Player誌 1977年

MESA/Boogie SANTANA Guitar Player誌 1981年

Greco EGF-1200

Sunburst Lady 1981年

Mosrite Japan 70's

The Ventures Model

「レッドラベル」のグリルを再現しました!

ピグノーズ修理帳 特別編:無いものは作れの巻

Pignose 7-100(オリジナル)のスピーカグリルの裏地には、細かい丸穴の開いた薄い樹脂製(おそらく塩ビ板)のパンチングシートが使用されているのですが、これが経年劣化で歪(ゆが)んだり破れてしまっている個体を見かけます。7-100R(リイシュー)ではその部分に頑丈な鉄製のパンチングシートが採用されているので、古くから改良の対象として挙げられていたのでしょう。音への影響もあると思われますが…

 

ピグノーズ雑記帳でも触れましたが、米国における“DIYスピリット”には感心させられる反面、試作も工夫もせずに「えいやっ!」とやっつけた結果というのも数多くありまして、これもご多聞にもれずそのなれの果ての惨状をご紹介する次第です。


おそらく前述のとおり、経年劣化でグリルの裏地がボロボロになってしまったのでしょう。裏地の代用素材をホームセンターで入手できそうな金網に交換するところまでは、妥当な修理過程だと店主も思います。

しかしその後がいけません。このオーナーは3つの失敗をしています。

 

1.Pignose のエンブレムを外す際、留め金を外すのに失敗しピンを

  折ってしまっている。

2.エンブレムがうまく取り付かないのに業を煮やしてか、グリルクロ

  スへの接着剤の直付けを試みてしまった。

3.接着剤の選択(浸透タイプの瞬間接着剤と思われる)および使用量

  を誤って、グリルクロスに染み出させてしまった。

 

結果はご覧の有り様で、せっかくのオリジナル・フロントフェイスが、可哀想な状態になってしまっていました。

Pignose 7-100(オリジナル)のスピーカグリルの素材には、おそらく Jute(ジュート:インド麻)と思われる生地が使用されています。

近場の生地店や手芸店を廻って探したのですが、糸の太さが1mm程度あり、目が詰まって適度な厚さを持ったうえに黒く染色された Jute生地を見付けることはできませんでした。しかし別件で立ち寄った100円ショップで、偶然に思わぬ素材と遭遇することができたのです。

それは Jute製の野菜袋でした。

表にはプリントが入っていますが、裏面は無地です。生地はやや雑な織りで糸の太さも若干不揃いでしたが、厚みといい目の詰りぐあいといい、これを黒で染色すれば何とか代用が務まるだろうと、早速購入しました。

さてさて裏地の方はどうしようかと。

これも方々探したのですが、厚さ 1mm未満で細かい丸穴の黒いパンチングシートというのは、なかなか無いものです。

そこでこちらも発想を変え、丸穴に拘らずに使えそうなものを探してみました。

ホームセンターの園芸用品売場で見付けたのがこれ。鉢底に敷くネットです。

約 5mm程の格子状で厚さも 1mm程。

材質はポリエチレン樹脂とあります。

カットも簡単にできそうなので購入!

素材も揃ったところで、快晴無風の日を選んで製作開始。

染色は生まれて初めてのチャレンジなので、どきどきします。

先ずは野菜袋の縫製をほどいて、布に戻す作業からです。

ここで最初の地獄を体験しました。野菜袋だけあって見かけよりはるかに縫製がしっかりしている。おまけに縫製の糸が生地の色に近くて見分けにくい。老眼の身にはたいへん厳しいスタートとなりました。

考えてみればこれを縫製したインドの方々には申し訳ない行為ですね。

やっとの思いで布に戻した野菜袋を、水洗いして絞ったところ。

水を吸うとギュっと縮んで、くしゃくしゃになってしまいました。

ここから先は、染料の説明書に忠実に作業を進めます。

何せ初体験ですからね。(笑)

染料は左下の写真のように、500cc で 40℃ のぬるま湯に溶きます。

右下は、バケツに 6ℓのこれも 40℃ のぬるま湯を張ったもので、これには食塩 250g を溶きます。双方とも溶解はスムースでしたが、さすがに食塩の方は時間がかかりました。相当しょっぱ~いはずですよ。


出来上がった食塩水に染料を加えて撹拌したところ。

当たり前ですがまっ黒です。

これを目前にすると、ここでこぼしてぶちまけたら大変なことになるだろうなという、ビビりの気持ちの方が頭を占めてしまいます。

ぐっと覚悟(何の?)を決めて、染料の入ったバケツに布を浸します。濡れたままなので、自然に染料が染みてきたのでほっとしました。

毛細管現象で色が上がってくるのに見とれていましたが、説明書にはこれにも所要時間があるので、沈めてから15分間の揉み込みをします。

洗車用に買った、使い捨てのビニール手袋が大活躍してくれました。


揉み込みが終わると、45分間の漬け置きでフィニッシュです。

ここで店主はティーブレイク。

でも 5分毎に撹拌は続けます。

染料に写る五月の青空がきれいだなぁと、半ば終わったつもりの気分でしたが、実は次工程にも地獄が潜んでいたのでした…

写真が撮れなくて申し訳ないのですが、この辺りは水回りの作業なのでご容赦ください。洗面所に移って染め終わった布を水洗いします。

ここで Jute から抜け落ちた膨大な麻の繊維片がところ構わず付着し、水栓に詰まるわで、大変な事態が起きました。こんなに繊維が抜けると布が無くなってしまうのではないかと、泣きたくなるほどの量でした。

しっかり染まってはいたのですが、とても感動どころではありません。

最後の修羅場をくぐり抜け、黒く染まった Jute の水分を切って広げて陰干しに移ります。

本当は脱水機にかけたかったのですが、布どうしが絡まったり更に繊維が出ることが怖かったので、手で慎重に絞りました。

爽やかな五月の風は、あっという間に半乾きにしてくれました。

くちゃくちゃになった Jute に、丁寧にスチームアイロンを当ててシワを伸ばして行きます。

何せ用途はスピーカグリルなのですから、フラットな生地じゃなければ意味がありませんからね。

素材だった Jute の野菜袋と比べるとこのとおり! ムラもなく、きれいに染色することができました。染料の説明書によると、1袋でTシャツ2枚分とのこと。

野菜袋4袋が適量との目算なので、残りはまた次回にでも…

出来上がった黒い Jute をスピーカグリルへと仕上げるために、形状と穴あけ加工するためのテンプレートを製作します。

この際だから、レッドラベルの前期と後期。そしてホワイトラベル用の3種類を一度に作ってしまいました。

このテンプレートに沿って先の鉢底ネットを切り出し、それに現物合わせで Jute をカットして軽く貼り付けます。鉢底ネットはポリエチレン製で普通の接着剤では効力が無いのですが、位置決めの仮止め程度であれば、ゴム系のクリアーで十分務まります。付け過ぎないために接着剤を一度不要な紙に適量出し、それを楊枝の先に少量付けて塗ります。


前述のとおり、このエンブレムのピンは折れてしまっているために、代用品があったとしてもストッパーが効きません。なので、エポキシ系接着剤をピンの残片に鉢巻状に巻き付けて硬化させ、ストッパーの代用としました。気候も良く、硬化時間も10分程で実用強度に達しました。

オリジナルを再現したスピーカグリルが、遂に出来上がりました!

装着した結果はこのとお~り!

オリジナルで十分とおってしまいますね。→ 自画自賛(苦笑)

 

ただオリジナルのスピーカグリルは、カーボンブラックと呼ぶべき本当に真っ黒く染色されているのに対し、店主が染色した黒色は、やや青みがかった薄めの黒色というのが相違点です。

でもそれは言われて初めて分かるレベルで、このグリルの方が経年しているようにも見えて、返って本物らしいくらいマッチしていますよ。

オリジナルに倣って作ったので「Emulate Grill」と名付けました。